「全くお前たちは何をしていたんだ！」
　イワ刑事は呆れた声をだす。無理もない。通報を受けてホテルに向かってみたら彼を迎えたのは半裸の２０歳前後の若いというより幼い男女であったからだ。部屋には独特の刺激的なにおいが立ち込め、床には丸まったちり紙が散乱している。何をしていたかは聞くまでもない。
「僕らはネットで集まったんです・・・。」
　おどおどした調子で一人の若者が答える。彼らはネットでパーティーの告知を出し、男女４人ずつ集まった。ルールとしてお互いの本名は名乗らないようにしているという。
　男はそれぞれ、タイガー、ドラゴン、イーグル、クロウと名乗り、女はアイリス、ジャスミン、レモンと名乗った。女が一人足りないのはピーチと呼ばれる女性が部屋のすぐ横にあるプールのそばで死んでいたからだ。部屋の窓からプールサイドで走り回る警官たちの姿が見える。ご苦労にも水の中で遺留品を探すために浮いたりもぐったりしている警官の姿も。それにしても暑い、もうすぐ正午だ。パラソルや彼らの影が左に向かって落ちている。
「それで、ピーチの相手は誰だったんだ？」
「ぼ、僕はアイリスです。」
　タイガーがおどおどと呟く。
「俺はジャスミン。」
　ドラゴンが引きつった声でやっと答える。
「私はイーグルよ。」
　レモンが答える。
「じゃあ、君がピーチの相手か？」
「・・・決まってないです・・・。」
　クロウが答える。
「本当か？」
「そうね、途中で二人を同時に相手したことが何度もあったわ。」
　ジャスミンがしれっとした顔で言う。
「みんなで一緒に男の子を攻撃もしたわね。」
　アイリスが付け加える。特に嘘はついてないようだ。全く世も末だ。そのとき、クロウが呟く。
「そういえば、日の出の頃、プールでピーチが泳いでいるのを見ました。」
「窓からか？」
「はい・・・。その後疲れて寝てしまったので・・・。」
「誰か他に気づいたものは？」
　他の連中は首を横に振る。楽しい事をしていてそれどころではなかったのか。
　イワ刑事は窓からプールを見る。気晴らしにでもでたのだろうか。そして彼はふとあることに気づきいった。
「クロウ君・・・だっけか？君は嘘をついているね？」
「ええ！？どうしてですか！？」
　イワ刑事は黙って窓を指さす。立ってみればわかるよというように。

問題：クロウの供述のおかしな部分はどこだろう？